アクアリウムにおける濾過(ろか)のお話し

2021年6月11日

濾過は飼育の基本

魚を飼育する際、一番重要なのが濾過(ろ過)である。

 

 

魚を飼うと餌や排泄物などで飼育水が汚れてしまうが、この汚れは魚にとって大敵なので、状態よく健康的に飼育するには、この汚れをきれいにする必要があるからだ。

そしてこの濾過には様々な方法があるので、以下、順を追って話をしてみたいと思う。

 

主な濾過の種類

濾過は大きく下の三種類に分類される。

物理濾過

これはその名が示す通り、魚の排泄物や餌の食べカス、ゴミといったものを濾しとる濾過の事を指す。

吸着濾過

有機物や有害物質を、活性炭等によって吸着させる事を目的とした濾過。

生物濾過

生物濾過とは、飼育水に発生した有毒物質を無害化する濾過のこと。魚の飼育では一番重要になる。

 

飼育で重要となる濾過

水槽飼育で重要になのは物理濾過生物濾過の2種類。吸着濾過は、応急的や補助的に使用する方法なので、よほど特殊な飼育環境でなければ使用しなくても何ら問題はない。

また、物理濾過は生物濾過の補助的な役割を果たすのが目的なので、あまり難しく考える必要はない。

 

ウールマット等で汚れを濾し取るのが物理ろ過

 

物理濾過や吸着濾過はどんなことをしているかイメージしやすいと思うが、生物濾過は目に見えない部分で行う濾過なので、次はこの生物について説明してみたい。

 

生物濾過の主な役割

生物濾過は、バクテリアの働きによって水をきれいにする濾過のことを指す。

魚の排泄物には有害物質=アンモニアが含まれているが、これをバクテリアの力によって無害化するのが生物濾過の役割だ。

具体的には

 

アンモニア(猛毒)→亜硝酸(やや毒)→硝酸塩(ほぼ無毒)

 

というような流れで濾過を行っている。

ちなみにこの生物濾過で活躍するバクテリアは主に2種類があり、アンモニアを亜硝酸に変えるニトロソモナス、亜硝酸を硝酸塩に変えるニトロバクターがある。

つまり、これらのバクテリアをフィルターで使用するろ材で繁殖させ、水質を浄化させるのが目的で、生物濾過無しでは魚は飼育できないと言える。

 

硝酸塩の毒性は低いが……

さて、ここでちょっとした疑問を抱いた人もいるんじゃないだろうか。

「それじゃ硝酸塩はどうなるの?」

と。

この硝酸塩は、魚にとってそれほど毒性があるわけではないので、それほど神経質になる必要はないが、大量に蓄積されてしまうと魚へ悪影響を及ぼしてしまうケースもあるので注意が必要だ。

具体的には餌食いが悪くなる、魚の体表を覆う粘膜にダメージを与える等、直接的ではないにしてもこれが引き金となって病気を誘発したりすることもあるので、無害だからといってずっと放置するのはあまりよろしくない。

となると、この硝酸塩も濾過することが望ましいのだが、残念なことに水槽飼育で硝酸塩を完全に無害化することは非常に難しいのである。

 

無論、その方法は全くゼロではなく、

  • 水草やコケ類の栄養分として分解させる
  • 嫌気性バクテリアによって分解させる
  • 除去する薬品を使う

など、いくつかの方法があるにはあるのだが、なぜ硝酸塩を濾過することが難しいのかを説明したいと思う。

 

水草やコケ類の栄養分として分解させる

水草類が硝酸塩を栄養分として吸収、分解する量は非常に少なく、普通の水槽では栄養分として分解される量よりも蓄積される量の方が圧倒的に多くなってしまうから。水草を大量に入れて、生体をごく僅かに飼育する環境ならば可能になるケースはある。

 

嫌気性バクテリアによって分解させる

水槽飼育においては、フィルター等の構造的な問題から嫌気性バクテリアを繁殖させる環境が作りにくい。仮に作れたとしてもその環境を維持することは難しく、また、嫌気性バクテリアは魚にとって有害なものなので、管理がとてもシビアになる。

 

除去する薬品を使う

コストがかかるだけでなく、使用方法を間違えると魚や水質に致命的な悪影響を及ぼすことがある。また、飼育する魚によっては使用できない。

 

基本的に硝酸塩の濾過は困難

どの方法もがかなり限定されてしまうだけでなく、硝酸塩を濾過させるには相応の飼育経験を積み、かつ専門的な知識、スキルを身につけなければならないので、基本的には「濾過できない」ものと捉えたい。

 

硝酸塩を減らすためにすること

それではどうやってこの「濾過することができない硝酸塩」を無害化させるのかというと、飼育者自身の手によって=水換えによって減少させていくしか方法がない。

だからほとんどの飼育者、ショップ等は

 

出典:irasutomantul.blogspot.com

「魚の飼育は水換えが基本だ、コノヤロー!!」

 

と口を揃えて言うのである。

この水換えもただやれば良いというものではないが、硝酸塩をどう濾過させるかあれよこれよと試行錯誤するよりも、定期的に水換えをした方がずっと安全で確実に魚を飼育できるので、

「水換えに勝る濾過は無し」

と覚えてアクアリウムライフを楽しもう。

 

2021年6月11日飼育の基本

Posted by ドン・モフチョ